STUDY
りんごについて学ぶ

企業×農家×行政の取り組み

若い世代のりんご離れが進みりんご市場が減少しているなか、飯綱町のりんご農家、飯綱町の行政は、さまざまな取り組みを行なっています。その中で、企業×農家×行政がタッグを組んで、地域やりんご産業を盛り上げる取り組みをされている「株式会社 サンクゼール」の野村さんより、お話をお伺いししました。

「株式会社 サンクゼール」の取り組み

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「株式会社 サンクゼール」とは

サンクゼールは、1982年に久世 良三によって設立されました。創業者はもともと東京生まれでしたが、スキー好きが高じて、75年に新潟県の斑尾高原にてスキー客向けペンションを開業。ペンションは繁盛しましたが、あまりの忙しさに妻が実家に帰ってしまったことをきっかけに事業を見直し、ペンション売却後は、ペンションでお客さまに評判が良かった妻の手作りジャムの販売を行いました。売れ行きは好調で、徐々に販路を拡大し、長野県内のリゾート地域などを開拓していきました。そんな時、新婚旅行を兼ねて行ったフランス旅行で、美しい田園風景の中で、地元でとれた食材を使用した美味しい料理を食べながら、ゆったりと誇りを持って生活している人々に感銘を受け、この雰囲気を飯綱町で再現したい、と思い飯綱町にて「サンクゼール」を始めました。
現在では、サンクゼールの他に、その地域にしかないこだわりの食材のみを販売する「久世福商店」も立ち上げ、現在では2つ合わせて全国143店舗展開しています。
飯綱町のサンクゼールには、ショップの他にワイナリー、レストラン、チャペルも併設されていて県外からの観光客も多い、人気の観光地となっています。

サンクゼールのシードル

サンクゼールのシードルは意外と歴史が古く、2000年に亜硫酸無添加の「リンゴワイン」の商品開発を行なったことが始めです。これは、りんご農家さんから、りんごのお酒を作れないか、と相談があったことがきっかけです。その後、次々と新しいシードルを開発し、現在では6種類のシードルを製造、販売しています。
サンクゼールでは主に高坂りんご、サンふじ、メイポール、ブラムリー、ベル・ド・ボスクープの5種類の品種を使用しています。飯綱町では、定番のふじ以外にも、酸味・渋味・香りに特徴のある珍しい品種のりんごを栽培しているので、味に深みのあるバラエティ豊かなシードルを作ることができます。

官民協働の取り組み

飯綱町のりんごを今後どのように活用して行くか、というところに着目したのが飯綱町役場でした。特産品開発事業で、飯綱町でしか栽培されていない幻の和りんご「高坂りんご」の商品価値をもっと上げようとさまざまなメーカーへ声をかけ、その中にサンクゼールも含まれていました。
高坂りんごは、そのまま生で食べると渋味が強くあまり美味しくないと言われていましたが、その渋味に目を付けシードルにしてみたところ、甘味のあるサンふじと、渋味のある高坂りんごが絶妙に奥深い味わいになり、大変好評をいただきました。
高坂りんごの他にも、果肉が赤いのが特徴のメイポールや、パイナップルのような味わいが特徴のベル・ド・ボスクープなど、めずらしい品種を飯綱町から紹介してもらい、商品企画・開発を行ってきました。このように、サンクゼールのシードルは、りんご農家さんと飯綱町役場の協力や連携で成り立っています。

数字で見る実績

近年のシードル人気もあり、シードルの年間売上本数は、2017年は2.7万本、2020年では4万本になるなど、1.5倍ほど増加しています。また、りんご購入量の推移は、2016年は31t、2020年は58tと、約2倍に増加しています。
新型コロナウイルスの影響により、2020年は少し数字が下がりましたが、好調に増加している状況です。サンクゼールでは、ただ商品を売れば良いというわけではなく、りんご農家さんと定期的に意見交換会を行い、綿密に連携をとっています。りんごの購入価格を上げたり、めずらしい品種はサンふじの約3、4倍の価格で購入するなど、りんご生産者にもしっかり利益が出る、メリットがあるような製品開発を行っています。

アップルブランデーの開発

商品開発はシードルだけに留まらず、2017年に飯綱町の補助金により蒸留器を購入し、アップルブランデーを作る取り組みも始めました。飯綱町産のふじりんごと高坂りんごから作った世界初の和りんごを使用したブランデーは、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2022にて銅賞を受賞いたしました。他にも、若い女性をターゲットにしたりんごサワーの発売をするなど、りんごを使ったお酒の商品開発に力を入れています。