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講師の声

りんご学校では「友人や親戚のように、長くお付き合いできる関係性」を築きたい

やまじゅうファーム代表 中村市郎さん

 りんご学校の特別講師として関わってくれている、やまじゅうファーム代表の中村市郎さん。りんご栽培約50年のベテラン農家です。座学での講師のほか、時に現地研修に来た受講生に対してりんご栽培に関するアドバイスもしてくれています。「友人や親戚のように、長くお付き合いできる関係性ができれば」と期待を寄せています。

——町内のりんご農家から見て、りんご学校という取組みをどのように感じていますか?

りんご学校との関わりは、りんご学校が始まってから2年目(2018年度)に東京で開催された入門編が最初であったと思います。りんごについて学んでいただくことは、私たち生産者にとっても大変ありがたいことです。りんご学校の受講者の中には、やまじゅうファームを訪ねて来てくれた人もいました。りんご学校を通じてお話しする機会があったことがきっかけでした。人と人とのつながりを大切にし、りんご栽培について正しい理解を深めてくれることが、私にとって一番うれしいことです。スクリーンショット (282).pngりんご学校のオンラインセミナーで講義をする様子

りんご学校の受講者の皆さんは、折角こんな田舎まで来てくれているのですから、りんごだけにこだわらず、飯綱町におけるスキーなどのレジャー、山菜採りや郷土料理、周辺の北信越・北陸地域にある温泉や季節の風物詩などにも視野を広げて、楽しんでもらいたいと思います。そして、第二のふるさととして、友人や親せきのような関係で、お付き合いできるようになることが、理想だと思っています。そうすれば、世代を超えた交流がずっと続くことになるような気がします。

りんご学校には、この地域の人々と心と心が結び合うような活動をしてもらいたいと思っています。自分たちは、どのようなりんご学校にしたいのか、話し合いができる会にしたらよいのではないでしょうか。

 

——りんご学校のつながりから、東京都練馬区春日小学校との交流が始まりましたよね。

 りんご学校第1期生の方(豊住さん、中澤さん)から相談を受けたことで始まった、春日小学校との交流(※)は、今も続いています。最初は、練馬でりんごの木が育つのだろうか、花が咲くのだろうかと不安が先に立ちました。私の知人が、埼玉県の本庄でりんご栽培していることは知っていましたが、東京でりんごを育てているとは思っていませんでした。

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2019年、りんご学校受講生と共に春日小学校のりんごを剪定

春日小学校には、おととしから給食用として5~6回に分けてりんごを送付しています。シナノドルチェ、シナノスイート、シナノゴールド、ぐんま名月、ふじ、グラニースミスなどその時期に取れる様々なりんごを知ってもらいたかったのです。子供たちが喜んでりんごを食べてくれることをうれしく思います。

 春日小学校に最後に出向いてから一年以上が経過してしまったので、校庭のりんごの木の様子が気になります。花が咲いたのかどうかも心配しています。機会があれば、また出向いてみたいと思います。

話は変わりますが、子供たちの先には、消費者である親御さんがいらっしゃいます。私たちのりんごを知ってもらうためにも、この様な交流は大切なことだと考えています。りんごの販売先を増やすためには、ブランド化なども必要だとは思いますが、人と人との交流を通じて、購入していただく方々を増やす方が信頼関係を築くことができて、長続きすると思います。小さな子供たちが大人になって、小学校で食べたりんごの味を思い出してくれたら、私たちの次の世代が生産したりんごをきっと買い求めてくれるのではないかと想います。

私は、これからも人と人とのつながりを大切にして、おいしいりんごを生産し、お届けしていきたいと思います。

(※)春日小学校には十数年前に植えられたりんごの木があり、同校の総合学習において利用されていましたが、長らく放置されている状態でした。受講生のひとりがこの総合学習に関わっており「何とか復活させたい」という思いをお持ちだったことから、りんご学校としても応援しようと、中村さんにりんごの木の剪定などを行っていただきました。その後も防除方法のアドバイスをするなど、交流を続けています。

 

——良いりんごを作るために、中村さんが実践されていることを教えてください。

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3月、りんごの枝を剪定する中村さん

りんご作りは、経験でしかない。

青森、秋田、岩手など東北地方のりんご農家との情報交換も実施してきました。良いりんごを作るためにどうしたらよいか、集めた情報をもとに自分の圃場で試したり、近所の農家に様子を聞いたりもします。土壌分析を行い、専門家からアドバイスを受け、適切と思った肥料のやり方を実践し、結果を観察します。ダメだったら、また次のことを考えます。ずっとこの繰り返しで、これが正解というものはなかなかありません。

剪定一つとっても、昨日までこうしていたが、今日畑で作業していて、この方がよいのではないかと思ったら、やり方を変えます。私は剪定だけは、人任せにせず全部自分でやります。剪定しながら、この枝にできるりんごは、あの人の好みのりんごになるって、想像ができます。出来が悪かった年のことを温暖化が原因だなどという人もいますが、私はそれだけではないと思います。毎年毎年気象条件はどんどん変わってきますから、それに負けないようにしていくだけです。良いと思ったことは何でもやってみます。私が今、一番興味を持っているりんごは、「ムーンルージュ(赤肉りんご)」。デザート用としての広がりに期待を持っています。最近は嗜好が、酸味と甘みが両立しているりんごにシフトしてきていると感じがして、確認してみたら一時期のように酸味が少なく甘いだけのりんごは、消費量が落ちてきていることが分かりました。

それから、りんご学校の木も人工授粉した方が、格段に良いりんごが成ると思う。気まぐれなミツバチ任せじゃだめ。ミツバチが品質を決めちゃうからね。教えられたら、聞くだけじゃなく実践することが大切ですからね。

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やまじゅうファームのりんご園

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