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ホーム読む移住者インタビュー相澤亮さん・香織さん「妻の直感を信じてみたら楽しい暮らしが待っていた!」
相澤亮さん・香織さん「妻の直感を信じてみたら楽しい暮らしが待っていた!」

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「ノープランでの移住もありですよ」
いたずらっぽい笑顔で答えてくれたのは、2018年に、埼玉県から高坂(こうさか)地区に移住した相澤 亮さん・香織さんご夫妻です。高坂地区は、飯縄山の裾野から続く標高800メートルほどの高台にあり、眼下には棚田のような田んぼが広がる美しいエリアです。

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「どうしても、空気がきれいで、畑があって、山が近くて、見晴らしのいい古民家に住みたかったんです」

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まっすぐな瞳でそう語るのは、クリパルヨガのインストラクターをしている妻の香織さん。クリパルヨガは、完成されたポーズを目指すよりも、セラピー的要素が特徴のヨガなのだそう。
「ヨガを通して、自分の忘れていた根っこの部分を思い出して、木と紙の温もりを感じられる古民家に住みたい、という想いが大きくなっていったんです」
生まれも育ちも埼玉県の香織さんですが、子どものころに家族で年に1度訪れていた、東北のおばあちゃんの家やその暮らし、冷たい水の味、澄んだ空気が大好きだったそうです。
とはいえ、埼玉に家を建てて10年目、ローンも残っているし、安定した仕事もある。香織さんが「移住して山の古民家に住みたい」と言い始めた当初、夫の亮さんは「いったいこの人は何を言っているんだ? と取り合いませんでしたよ」。
しかし香織さんは諦めず、インターネットで見つけた長野県の物件を亮さんに見せながら、「これが私の理想の家なの」と説得を続けたそうです。
ご夫婦が理想の家を見に飯綱町を訪れたのは、桜の季節。思っていた通りの家と景色に興奮気味の香織さんの隣で、亮さんは遠い目をして山を眺めながら、「ここから仕事に通えるわけもないし、ここに来るイメージもわかないと、途方に暮れていました」(亮さん)。
それなのに、なぜ決めたのか聞くと、「いきなり後頭部を殴られて、気が付いたらここに居た、というような感じです(笑)。というのは冗談ですが、人生は一度きり。楽しまなくちゃもったいないな、と思って」(亮さん)。
常にユーモアを忘れず、ニコニコと笑顔で対応してくれる姿勢からも、香織さんの想いを温かく受け止めるやさしさ、そして、何事にも前向きな人柄が感じられます。

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とは言うものの、移住するとなると、気になるのはやっぱり仕事です。
「埼玉の家は無事に売却できたのですが、仕事については完全にノープランでした」
これまでずっとスーパーマーケットに勤務し、小売業として食品の仕入れ販売に携わってきたので、「飯綱に来たからには1次産業をやってみたい」と、農業系で探し、一度は町外の農業法人に就職が内定したそうです。しかし、町役場に就農相談に行った際に、町内の直売所を運営する「飯綱町ふるさと振興公社」を紹介され、「どうせなら町内で働きたい」と、こちらに決めたそうです。現在は、これまでの経験を活かし、仕入れから農家対応、新しくできた加工所に至るまで、さまざまな業務を任され、忙しく働いています。米、そば、りんごの農作業も一通り経験しました。
「スーパーマーケットにいるときは、食品を扱っていても農家さんとは接点がありませんでした。生産している農家さんと直接関われるのが、とても新鮮です」
道の駅めぐりが趣味だった亮さんが、農産物直売所の仕事をすることになったのも、何かの縁なのかもしれません。

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香織さんは、平日は人手の足りない農家さんの手伝いをしている「IIZUNAアグリサポーターズ」に参加して、りんごやももの農作業をしています。そして週末は、障がい者支援施設でのお手伝い、さらに依頼があるとヨガを教えています。3つも仕事を掛け持ちして大忙しではと聞くと、「農作業は雨が降れば休みだし、トリプルワークぐらいがちょうどいいです。朝起きて、美味しい空気をいっぱい吸って、無農薬で育てた野菜を採って食べて、ここに来て良かったなと思います」。
家の前の庭には大好きな花を少しずつ植えており、誰もが立ち寄れるオープンガーデンにするのが香織さんの目標なのだそう。また、シンボルツリーとしてりんごの苗木を植えました。
「すくすく育って、実をつけてくれるのが楽しみです」

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次に気になるのは、相澤さんご夫妻が暮らす、築100年を超える古民家です。
「古民家と言えば聞こえはいいですが、廃屋寸前のボロ屋ですからね」(亮さん)
引っ越してきて最初にしなければならなかったのは、古民家を住める状態にすること。たった2年間でも、人の住んでいなかった古い家はあちこち修繕が必要で、屋根を塗り替え、床を張り替え、上下水道も引き直さなければいけませんでした。なんと、修繕中はキャンプをしながら作業したそうです。修繕担当は、もちろん亮さん。
「何しろ時間だけはあったので(笑)。床下の処理方法は畳屋さんに教わりました。畳を上げている間に土間ポリシートと調湿のためのゼオライトを敷き込みました」

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二間続きの和室は畳を残し、ほかの部屋は古材を使ったフローリングにすることに。大工さんである香織さんのお父さんも、2週間泊まり込みで作業してくれたそうです。手を入れた家はぴかぴかに磨き上げられ、古さを生かしてセンスよく整えられています。

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問題は寒さ対策です。高坂地区は、町内でも標高が高く冬は積雪も多く冷え込むエリア。検討した結果、町から補助の出るペレットストーブ(おが粉などを固めた木質ペレットを燃料とするストーブ)を設置しました。完全燃焼するので排気筒が短くて済むので古民家でも使いやすいタイプで、「とても暖かいし、お料理にも重宝しています」と香織さん。相澤家は、移住4年目の現在も修繕が続けられているそうです。

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実際に移住してみないとわからないことは、ほかにもありました。
「僕たち、引っ越してきたばかりは車が2駆(2輪駆動)だったんですよ」
その名の通り、高坂地区は坂の上にあります。近所のおばちゃんに、「4輪駆動の車でないと、雪が降ったら前の道は上がれないぞ」と教えられたそうです。また、引っ越してすぐに言われたのは、「ビーバーを買え」でした。
「ビーバー???」
ビーバーとは草を刈る刈払機のことで、山田機械工業(株)の刈払機の商品名。げっ歯類の動物のことではありません。家の周りや畑、田んぼの畦の草刈りをするために、田舎の家庭の必需品なのです。
何もかも初めてでわからないことだらけでしたが、トラクターと除雪機はお隣のおじいちゃんから譲り受け、使い方も教えてもらったそうです。
また、飯綱町は秋のお祭りが盛大で、各集落に神楽と獅子舞が受け継がれており、なかでも高坂地区は、「男獅子」「女獅子」と二つの獅子舞を継承しています。もちろん亮さんも「一度稽古を見に来い」と誘われたそうです。
「太鼓や後持ち(獅子舞の後ろ足)をさせてもらいました。稽古が終わったあとの宴会で、湯呑茶碗に日本酒というのが衝撃的でしたね」(亮さん)
「こちらでは、縁起を担いで新居では獅子に舞ってもらうそうなのですが、コロナ禍でお祭りは中止が続いています。再開できたらわが家でもお獅子を舞ってほしいです」(香織さん)
野菜をいただいたり、お花を交換したりと「近所の方は本当に皆さんいい人ばかりで助かっています」と口をそろえる亮さんと香織さん。人生をとことん楽しんでいるご夫妻だからこそ、ノープランの移住もひらりと乗り越えてしまうのかもしれません。 

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