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滝澤宏樹さん「難しい課題も方程式のように楽しみながら解いていきたい」

滝澤宏樹さん(26)は、いいづなコネクトWEST内にある飯綱町初のスポーツジム「Sent.(セント)」(管理運営・株式会社I.D.D .WORKS)のストアマネージャー。ほのぼのと穏やかなソフトな笑顔で、利用者を迎えてくれます。

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株式会社I.D.D. WORKSは、スポーツ関連のコンサルティング業務のほか、農産物の生産、販売と多様な事業を展開しています。そこへ、町内の一軒家が空いたという情報が飛び込んできました。

「これから町内で農業事業を本格稼働していくのにあたり、農業体験をしに来る人たちの宿泊施設があったらと考えていたので、借り上げることになったんです。同じタイミングで、僕が住んでいた長野市内のアパートの更新があって、通勤が楽になるように町内に引っ越そうかと考えていたところでした。けど、ちょうどいいアパートは空いていなくて。じゃあ、ここに住んじゃおうかということになりました」

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地区の名前を取って「坂口ハウス」と名付けられた一軒家に、真冬の1月から住むことになった滝澤さん。
半年前まで人が住んでいたとはいえ、昭和40年代に建てられた建物は老朽化し、いたるところに修繕が必要な状態でした。
「今の生活は、一言でいうと『サバイバル』。とりあえずこの冬をしのげればという感じです(笑)」
今年の飯綱町は、例年になく雪が多く冷え込んでいます。会社の仲間で集まり、木造2階建て5DKの建物のうち1階の一部屋だけを、なんとか住める状態に手を入れたそうです。
「こんな状態を見せたら、移住したい人がいなくなるんじゃないですか?」と心配する滝澤さんでしたが、一人暮らしの部屋を見せていただきました。

玄関をあがると、室内のあちこちに修繕の形跡が残っています。
案内された部屋の入り口には、ペアガラスの屋外用アルミサッシが取り付けられていました。多少の違和感はありますが(笑)、温かい空気を外に逃がさないようにするナイスアイデアですね。

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部屋の中は、一部まだ断熱材が見えている壁もあって、たしかにサバイバル感満載です。工事中の家に住んでしまっている感じですが、ベッドとこたつ、エアコン、灯油ストーブが置かれ、若い男性の一人暮らしにはじゅうぶん快適(?)な空間になっていました。
「雪で湿度もあるせいか、長野市に暮らしていた部屋より暖かく感じるんですよ」

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広縁の古い掃き出し窓は取り外し、譲り受けた中古の二重サッシに付け替えてもらいました。協力してくれた大工さんに、節約のため仕上げは自分でやりたいとお願いしたところ、引き渡された状態は、壁に透湿防水シートを張ったところまでだったそうです。
「ここまでか!って感じでしたけど(笑)、自分たちで壁に断熱材を入れて石膏ボードを張りました。この先は春になってから考えます」

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使っていない2階の部屋は床を剥がして根太がむき出しのままですが、お風呂やトイレは新しく、生活に支障はない状態です。キッチンには大きなカウンターがあるので、リフォームが完成したら大勢が集える素敵な家になりそうですね。

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坂口ハウスの両隣は、地区の公民館と区長さんのお宅。
ある大雪の夜、滝澤さんが仕事から帰ると、家に入る道が除雪した雪でふさがれてしまっていました(雪国あるある)。車が停められないため、スコップで雪かきをしていると、夜も遅いというのに区長さんが除雪機を出して雪を飛ばしてくれたそう。「区長さんが神様のように見えました」と滝澤さん。
この日以外にも、ご近所への引っ越し挨拶につきそってもらったり、区長さんには何かとお世話になっているそうです。

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スポーツジムSent.のコンセプトは、滝澤さんの発案。「今日は誰に会えるだろう」をうたい文句に、友人や地域の人と話したり、自分のペースで体を動かしたりしながら、ココロとカラダがゆっくりほどけていく銭湯のような場所を目指しています。
出身地でもある上田市の、信州大学繊維学部で人間工学や感性工学を学び、大学院まで進んだという理系の滝澤さん。ちなみに繊維学部は、日本で信大にしかない学部だそうです。
「感性工学というのは人体の仕組みや気持ちの変化を把握し、人が幸せになるモノをつくる学問です。今はコロナ禍でSent.のレッスンをオンラインにしているのですが、どうやったらあらゆる利用者さんにオンラインレッスンに参加してもらえるか、という仕組みづくりに、学んだことを生かしています」

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理論立てて丁寧に説明するのが得意と自負するだけあって、80歳を過ぎた祖父母に、タブレットの使い方を教えたところ、今ではLINEを使いこなすまでになったとか。高齢者にスマートフォンやパソコンを教えるのは根気がいります。しかし滝澤さんは、苦ではないと笑顔で語ります。
「自分にとっては簡単で便利でも、ある人には使いにくくて不便。どうやったらその人が乗り越えられるハードルに設定できるのかを考えるのが、難しければ難しいほど楽しいんです。方程式を解くような感覚ですね。Sent.でたくさんの人と知り合って、ご要望もいただいているので、多くの人が利用しやすい形に進化させていきたいです」

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目の前の、自分の課題に真摯に取り組むことが、ほかの誰かや地域の役に立っていたらいい。気負いなく田舎暮らしを楽しむ滝澤さんのような若者が、これからの地方を盛り上げていくのかもしれませんね。

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