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本郷華子さん「飯綱町との出会いが本来の自分らしさを呼び覚ます」

ここは、滝沢川のせせらぎが涼やかに聞こえる飯綱町古町地区。漆喰と杉板の壁が美しい古民家の前で迎えてくれたのは、本郷華子さん(46)です。小学校3年生になる息子さんと、3年前に飯綱町に移住してきました。

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アプローチから玄関まで続く長い濡れ縁には、もともとこの家にあったという古道具が並び、庭には自然農で育てている野菜やハーブが植えられています。着物地のサルエルパンツに同じ風合いのイヤリングという、本郷さんのこの日の装いが古民家にぴったりで素敵ですが、

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鳥居川の支流、滝沢川沿いに建つ古民家のため夏でも涼やか

「古民家暮らしに憧れがあったわけではなくて、息子と二人で暮らすのにちょうどいい家を探していたら、この物件に出会ったんですよね」
この家を紹介されたとき、ちょうど屋根から虹が出ているのを見つけ運命的なものを感じ、「あ、呼ばれてる!」と思ったそうです。

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本郷さんは2019年4月から、飯綱町の地域おこし協力隊として「四季成りいちご」栽培のミッションに取り組んできました。四季成りいちごはハウス栽培でしたが、自宅では露地栽培でいちごを植えています。

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移住前に住んでいたのは東京都八王子市。当時、本郷さんは体の不調に悩んでいたと言います。

「母子家庭で無理があったのかもしれませんが、のどの痛み、副鼻腔炎、突発性難聴など、一年中風邪をひいているような状態でした。『医療費にそれだけお金がかかっているなら食べ物を見直した方がいい』と知り合いからアドバイスを受けて、無添加や有機栽培の食品を選ぶようにしたところ体調が良くなったんです」

食べ物で変わるなら、水も空気も変えた方がいいのではと移住を考えるようになった本郷さん。「息子も虫が大好きだし、子育てするなら好きなことが存分にできる環境がいい」とまずは移住先を探し始めました。

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当初は、東京都奥多摩エリア、和歌山県、三重県、大分県といくつも候補があったそうですが、その中に長野県は入っていませんでした。現地へ出かけたり、話を聞いたりしたものの、なかなかご縁がつながらなかったところ、移住をサポートしてくれる会社の方に、『ちょうど長野県飯綱町の移住体験ツアーがあるよ』と誘われ、参加したのが最初だったそうです。すると、いいづなリゾートスキー場を見て学生の頃に来たことを思い出したり、地元の方との交流会で話した人が偶然、八王子から飯綱町にお嫁に来た方だったりと、思いがけず親近感が沸いたのだそう。「極めつけに、帰りのバスで寝起きの息子が『ママ、いいづなの神様がおいでって言った』って言うんです。ここに住むんだなって思いました」

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当時、本郷さんはIT系の会社に勤めていましたが、移住を2年後と見据え、田舎でも介護の仕事はあるからとヘルパーの資格を取得。介護の仕事に転職し、移住に備えました。

「介護の仕事に慣れて、移住費用を貯めてからと考えていました。それが、たまたま私が東京農業大学出身だと知った方から、飯綱町で農業枠の地域おこし協力隊員を募集しているから応募してみたらと勧められたんです。ありがたいことに採用され、働く場を得て、住居の手配等もしていただけたので、2年後と考えていた予定より早く移住することができました。とんとん拍子に『来ちゃった』という感じです」

08.jpg地域おこし協力隊がきっかけで飯綱町に移住

地域おこし協力隊は2022年4月に任期を終え退任。現在の本郷さんは、町内でパートの仕事や農作業、草刈りの手伝いをしていらっしゃるそうです。さらに、伝筆(つてふで)講師、少年サッカーのコーチ、邦楽ユニット「和乃音(わのおん)」の篠笛奏者、お笑い芸人「ナースコールR」のマネージャーであり、飯綱町の特産品であるりんごを使ったジュースやオリジナルの「タレ」の販売まで手掛けている生産者と、ここでは紹介しきれないほどの活動を精力的に、そして楽しそうにこなしています。

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食べ物と空気と水が変わったことで、本来の自分の人間性が出てきたように感じるという本郷さん。「ここに来て、やりたいことや新しい出会いがどんどん増えていきました。そして、やらなきゃいけないことなんてない、全部自分で自由に選んでいるんだと思えるようになりました」

なかでも興味を引くのは「伝筆Ⓡ」ではないでしょうか。伝筆Ⓡとは、筆ペンを使って書いた大切な想いやメッセージのこと。名刺には「名前のことはな書 作家」と書かれているのですが、これは「名前の持つ言霊を、伝筆という文字を描く技術で表現することなんです」と本郷さん。

「華子の“は”という文字には、『羽ばたく』『発信する』という意味があります。もしかしたら、私は発信する人として飯綱町にいるのかな。そして、私の発信をきっかけに羽ばたいていく人が生まれるかもしれません。おせっかいが世界を救うと信じています(笑)」

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本郷さんの書く文字は温もりがあり「名前を書いてほしい」という依頼が多い

自分の心と身体が求めていることに素直に向き合った結果、自分らしさを表現する場を手に入れた本郷さん。移住先を決めたときも、古民家に出会ったときも、自分の感覚を信じて決断されたことが印象的です。

「悩んだら、動き出す。悩むならその時間の分、動きたい。経験値が高い方がいいと思うので」

人生の選択に迷ったら、縁を自分で引き寄せてしまうパワフルさも、ときには必要なのかもしれませんね。

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社会福祉協議会&北部高校&福井団地で参加している福島ひまわり里親プロジェクト

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お祭りで初めて篠笛を手にしたのをきっかけに邦楽ユニットに参加。ユニットは尺八、三味線、琴、太鼓、篠笛で構成。本郷さんにとって、音楽もなくてはならないもの。

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飯綱町のりんごで作った「飯綱のタレどん」。原材料はりんご、玉ねぎ、醤油、みりん、人参、ワイン、にんにく、生姜、ごま、食塩、香辛料。添加物や化学調味料は一切使っていません。お肉だけでなくサラダなどにもよく合うと好評

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