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中條翔太さん「自分たちの思いを実現する場として飯綱町で起業しました」

みみずや、というユニークな名前の会社の代表取締役社長を務める中條翔太さん(28)が飯綱町に移住したきっかけは、転職でした。2020年の移住と同時に結婚し、奥さまの舞華さんと生後10か月になる長女の結葵(ゆあ)ちゃん、そして3匹の猫たちと暮らしています。

それまで勤めていた重電機器メーカーから、農業とスポーツで地域に関わる会社に転職、活動したのち、2022年に、そこから独立するかたちで「株式会社みみずや」を起業しました。

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中條さんは長野県大町市出身。舞華さんは、群馬県の会社に勤めていたときの同僚で姉さん女房です。「妻は物静かなタイプで、一緒にいて落ち着きます。料理上手でやさしい人です」。

中條さんも、とても落ち着いた雰囲気の持ち主で、10代のころから実年齢よりもだいぶ年上に見られていたそうです。「長野高専(国立高等専門学校機構 長野工業高等専門学校)ではサッカー部に所属していたのですが、4、5年生(大学1、2年相当)のときにコーチとして後輩を指導していました。試合などで他校の先生とやり取りする場面もあったのですが、先方には安心感を持ってもらえていたようです。事業をしていても、年上に見られて得していることが多いです」(中條さん)

誠実な姿勢と論理的な考え方を持ち合わせているため、地に足がついている印象を持たれるのでしょう。

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中條さん一家が住むのは、小玉地区にある築60年ほどの2階建て4DKの一軒家。襖を外したり、砂壁にペンキを塗ったりして古さを感じさせない工夫をしながら暮らしています。

「家賃は4万6千円で、飯綱町移住定住応援家賃助成金(若者世帯、子育て世帯の賃貸住宅の家賃に対し最大3年間で合計48万円(最大1年目2万円/月、2,3年目1万円/月)を助成)を利用させてもらっています。子どもには、子育て応援祝い金(子どもひとりあたり20万円)と、カタログで選べる誕生祝い記念品をもらいました。記念品は、カタログの中から選んだ「癒し処Nico」の骨盤矯正マッサージと「信濃地鶏」のソーセージです。ソーセージは年末に届いたので、つい先日おいしくいただきました!」

結葵ちゃんが生まれるときは、まさにコロナ禍。病院での立ち合いができなかったため、実家のお兄さんとお酒を飲みながら待っていたそう。出産は大町の中條さんの実家近くの病院でしたが、飯綱町内には産婦人科がないため、妊婦検診に通っていたのは長野市内の病院でした。車で20分ほどの距離なので、通いやすかったそうです。

愛娘の結葵ちゃんは、毎日忙しく活動する中條さんにとって何よりも癒しの存在です。お風呂のサポートをするために、帰宅時間や仕事を調整するようになったと言います。しかし、ママに抱っこされているときはニコニコしてくれるのに、中條さんに代わると泣かれてしまうこともあると、寂しそうな表情の中條さん。新米パパとして奮闘中です。

「こう見えて料理が好きなんですよ」と言うだけあって、得意メニューはカレーに唐揚げ、お好み焼きとバリエーション豊か。家事は分担を決めてはおらず、夫婦で自然に協力し合っているそうです。「イクメンだとは胸を張って言えませんが、できるだけ妻をサポートしたいと思っています」

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みみずやは、「素直に生き、豊かさを紡いでいく」というビジョンを掲げ、以前、このインタビューに登場してくれている滝澤宏樹さんとともに立ち上げた会社です。

元サッカー日本代表の石川直宏さんとコラボファームで奮闘する姿が、飯綱町の広報誌でも伝えられ「専業農家だと思われがちですが、農地を活用する事業のほか、イベント企画から運営、研修事業など、多角的なまちづくりに取り組んでいます。とはいえ、昨年の農繁期はほとんど畑にいました(笑)」。

日焼けしていて爽やかな好青年なので、一見するとアスリートのようですが、「僕はまったくアスリートではありませんよ」。サッカーボールを蹴るのは年に数回くらいだそう。農業に触れて育った原体験があり、家族総出で田植えや稲刈りをする光景が少なくなったことに寂しさを感じると言います。「同じように感じる人がいれば、規模や形態が変わっても農業は続いていくと思うんですよ。私たちは、皆さんに喜んでもらえる農作物をつくることが前提としてありますが、その農作物以外の価値も提供していきたいと思っています」。中條さん自身、経営者としてさまざまな事務作業に追われる毎日ですが、畑へ出て作業することは内省やリフレッシュの場になっているそうです。

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子育てについても農村の価値を感じています。「わが子には、身の回りにあるものが当たり前じゃないことを教えていきたいですね」。自分の意思を持ちながらも、人とのつながりを大切にできる子になってほしいと語ります。

「食べ物も電気も、それを生み出すヒトやモノ、ストーリーがあるから、手に入れ、使うことができます。そういう意味で農村を見渡してみれば、四季折々の景色があり、植物たちの成長する姿、変化を観察し認識することができます。物や人のつながりを知ってさえいれば、人生何とかなりますよ」。

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事業では、飯綱町が取り組みを始めている「オーガニック給食」にも携わっており、みみずやが管理する畑が試験圃場になる予定です。「農薬や肥料には基準量が設けられているし、安定生産に貢献している側面もあるわけなので、農薬は悪いもの、オーガニックが善いものというミスリードにならないように気を付けたいところですが、自然、土、微生物とのつながりを学ぶには良い取り組みだと思っています」

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中條さんの名刺には、代表取締役社長の肩書きと並んで“みみず大使”と書かれています。これは? と問うと、「みみずのように生きる人を増やし、応援する、開拓者のことです(笑)」との答えが返ってきました。会社のロゴマークは、麦わら帽子をかぶってスカーフを巻いたみみずのイラスト。かわいらしくて親しみがありますが、しゃんと前を向いていて、まっすぐに未来を見据えているようにも見えます。その横顔は、持続可能な地域社会の実現を本気で目指す、中條さんたちのようです。

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