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ホーム読む移住者インタビュー田中真治さん・奈々子さん 「誘われるままに田舎暮らしを丸ごと楽しんでいます」
田中真治さん・奈々子さん 「誘われるままに田舎暮らしを丸ごと楽しんでいます」

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田中真治さん(42)、奈々子さん(43)夫妻は、ゴールデンレトリバーの真之(さねゆき)くん(12)、黒猫の三笠(みかさ)くん(2)とともに、2023年4月に埼玉県草加市から飯綱町芋川地区に移住してきました。検討し始めてからわずか4か月のスピード移住だったそうです。

田中さんご夫妻はともに埼玉県草加市で生まれ育ち、結婚後は一軒家を購入して暮らしていました。真治さんは、4年前からASEA(アシーア)というブランド名で、犬用のウェットスーツやスノースーツなど、アウトドアシーン向けドッグウェアの開発・販売を行っており、

ワンちゃん連れのお客さんが自宅へドッグウェアの試着に来ることもあるそうです。そのため、もっと広々とした田舎の方がご近所への気兼ねがなくていいなと思っていたと言います。草加市の地価は近年上がっていると知り、「自分たちの家はいくらで売れるのかな」と調べてみると、かなりいい値段で売却できることがわかりました。自営業なので住む場所に制約もないのだからと、さっそく移住先を検討することに。

両家の両親とも草加市在住なので、当初、エリアは草加から1時間圏内ということで探し始めました。候補に挙がった茨城県と栃木県の物件は、現地を見に行っても決め手に欠けて、もう少し範囲を広げてみようかということになりました。

真治さんの父は長野県飯田市の出身で、いとこは上田市に住んでいることもあって、長野県も視野に入れて探し始めたところ、空き家バンクのサイトで見つけたのがこの家でした。飯綱町の赤塩地区に友人がいたので、“飯綱町”という名前は知っていたそうです。早速内覧に訪れ、物件を見てすぐにお二人は気に入ったのですが、案内してくれた不動産会社の担当者には、築100年以上の古民家ということもあり、“古いですよ”とか“落ち着いてから考えた方がいいのでは”などと言われたそうです。しかしお二人は直感的に「この家がいい」と確信し、訪れた2月に決定、翌3月には契約してしまったと笑います。

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ぬいぐるみが着ているのはASEAの犬用ウエットスーツ

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田中さんご夫婦が購入した家は、芋川区の中村という集落にあります。全体で300世帯弱が暮らす芋川区は9つの小字に分かれており、大半が昔から住む人なので皆さんほぼ顔見知り。そんななか「あの空き家に、県外から移住してきたらしい」となれば、懐の深い飯綱町の人の気質でしょうか、4月に引っ越してくるとすぐに近所の人たちから「困っていることはないか?」と声を掛けられたそうです。

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「草加では、あまりご近所づきあいがなかったので、びっくりしました」という真治さんですが、当初は戸惑いながらも、ありがたいなと感じたそうです。「野菜を分けてくれたり、地域のいろいろなことをご近所の皆さんから教えてもらっています」と話す奈々子さんは、都内のイタリアンレストランでコックとして働いていた経歴の持ち主。新鮮な野菜は手をかけ過ぎずに、素材の味をそのままいただくのが美味しいと力説します。「ユウガオのお刺身(ユウガオをゆでて薄切りにしたもの)は、ここに来て初めて食べました。辛子醤油をさっと付けていただくと箸が止まりません」。ほかに、町の広報で見つけた「食の匠講座(伝統の食農文化を学ぶ講座)」にも参加したり、さまざまな品種のりんごが手に入る飯綱町とあって、夏あかり、つがる、秋映、シナノスイートと端から味見したりして、食の飯綱町を堪能しているそうです。

「野菜はいくら好きでも、たくさんはムリと思っていましたが、ここでいただくキュウリとか美味しくて、いくらでも食べれちゃいます」と話す真治さんもお料理好きです。ご近所への煙やにおいが気になって、草加では遠慮していたそうですが、飯綱に来てから大きめの燻製器を購入して、プルドポークなどを作って楽しんでいるのだとか。

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春に移住して以来、町のあらゆることを楽しみつくしてきた田中さんご夫婦ですが、8月になると、真治さんはお祭りの稽古に誘われました。

「新参者が地域のお祭りに出ていいものかと恐縮する気持ちもあって不安で少し悩みましたが、と言っても20分ほどですけど(笑)、やりますって返事しました」と真治さん。奈々子さんは、「全くお祭りに参加するようなタイプではなかったから驚いた」そうです。

芋川神社の秋季例大祭は、毎年、秋分のころにおこなわれ、宵宮では各集落の神楽が芋川神社に勢ぞろいして獅子を舞います。お祭りの稽古というのは、太鼓や笛など神楽の演奏や獅子舞の踊りの練習です。曲調や舞の振り付けは集落ごとに受け継がれていて、基本的に楽譜などはなく、見聞きして覚えるもの。秋祭りの前3週間ほどは、集落の公民館などに集まって稽古がおこなわれます。「行ってみたらすごく楽しかった。集まっているのは、わりと自分と年齢の近い人たちでした。もちろん練習をするのですが、そのあとに飲み会もあって、お祭りの前後は、朝、昼、晩と飲みました」。真治さんは特別お酒に強いというわけではないそうですが、和気あいあいとした雰囲気が大好きになってしまったと笑います。奈々子さんも「家に帰ってきても太鼓のビートを刻んでましたよ」と楽しそう。「本番はチャンチキ(金属製の打楽器)を少し叩かせてもらえました。馬簾(ばれん=まといのこと)回しもやらせてもらって、あんまり広がらなかったけど「初めてであれだけできたら上出来だよ」って言ってもらえてうれしかったな」と真治さん。

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奈々子さんも、農協女性部の集まりに出たり、地元の女性たちの輪に積極的に入っていくなどして、日々、生き生きと活動しています。お二人とも本業そっちのけで、誘われるままに田んぼの稲刈りや脱穀、りんごの葉摘みや収穫など、いろいろなところに手伝いに行き、初めての体験を楽しんでいるようです。

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田中さんの家は築およそ100年にもなる古民家で、部屋が7つとキッチンという間取りです。奥には農業機械を置いていた2階建ての倉庫があり、現在、この倉庫がご夫婦それぞれの仕事場になっています。2階のミシンが置かれた机の前に座ると、窓からちょうど黒姫山が見えました。「ミシンをかけていて、ふと目を上げると山があるっていいじゃないですか」(奈々子さん)。1階には、運動が趣味という真治さんのトレーニングスペースも作りました。

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古民家に住むにあたって、お風呂など水回りの一部はリフォームを依頼し、玄関と廊下の砂壁には自分たちで漆喰を塗りました。

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居間の畳はさほど傷んでいなかったのでそのまま残し、奈々子さんが昔DIYしたという吉野杉の一枚板で作ったローテーブルを置きました。「この居間にすごくしっくりなじんでいますよね。この大きいソファーも雰囲気にぴったりで、古民家のためにあつらえたみたいだと思いました」(奈々子さん)。

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ソファーでは真之くんがねそべり、テーブルの下から三笠くんが顔をのぞかせます。まるで、前からこの家に住んでいたかのようです。

 

大きな古民家の間取りを生かして、将来は民泊ができるように準備しているというお二人。2階の客間にある広縁の窓からは飯縄山がきれいに望めます。山を眺めながらコーヒーを飲んで寛げるように、窓枠をDIYしてコーヒーカップが置けるようにしました。さりげなく置いてあるのは、飯綱町のPRキャラクターみつどんのアクリルスタンドです。もうすっかり飯綱町民ですね。

家の購入にあたっては「飯綱町移住定住促進中古住宅等購入費補助金(購入金額の1/10、限度額500,000円)」、「飯綱町移住定住応援リフォーム補助金(リフォーム経費の1/2、限度額500,000円)」が該当して、使うことができたそうです。

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階段の上にある小さな扉を開けると屋根裏の梁が見えます。ここから天井裏に上がれるようになっていました。

 

「初めてこの家を見に来たときに、この町でだったら“やれること”がたくさん浮かんだんです」と目を輝かせる奈々子さん。民泊のほかにも、りんごを使った犬用のおやつの商品化など、頭の中にさまざまなアイデアがあふれ出てきているそう。

「田舎暮らしは、馴染むまでに3年はかかるだろうという覚悟で来たんです。それが、地域の皆さんにこんなに受け入れてもらえて。家を見つけたのがここで良かったなと思っています」(真治さん)

真之くんと一緒にりんご畑を上っていき、芋川用水沿いに歩いて芋川神社まで行くのが、お気に入りの散歩コース。ワンちゃん用スーツの試着に来たり、遊びに来たりする愛犬家たちにも、飯綱町と古民家が大好評だそう。「ワクワクが止まらない!」というお二人のいいづな暮らしは、まだ始まったばかりです。

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