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ホーム読む移住者インタビューシントロンアルバートさん・地主シントロン仁美さん 「日本に住むなら長野の北信エリアがいいと、ハワイから移住してきました」
シントロンアルバートさん・地主シントロン仁美さん 「日本に住むなら長野の北信エリアがいいと、ハワイから移住してきました」

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Nookは英語で「隅・端」などを意味する言葉です。The Nook Lodge(ザ ヌックロッジ)はその名の通り、飯綱東高原の西ペンション村の表通りから少し奥まった隅っこに、飯縄山を背負ってゆったりと佇んでいます。

かつてペンションだった築 40 年ほどの空き家をリノベーションして、2019 年 11 月に自宅兼食事付きの宿としてオープンしました。玄関を開けると、ゴールデンレトリバーのアップルちゃん(4)が尻尾を大きく振って歓迎してくれます。「引き寄せられるようにここに来たかな」と話すオーナーご夫婦に、お話を聞きました。

2019 年 7 月、シントロン アルバートさん(58)と地主シントロン仁美さん(57)夫妻は愛犬アップルちゃんと共に、アメリカ合衆国ハワイ州から移住してきました。アルバートさんが日本へ移住する際の条件は、“長野県に住むこと”だったといいます。

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The Nook Lodge は、1 泊朝食付か朝夕 2 食付かが選べ、愛犬同室で宿泊できる部屋もある宿です。しかし当初は、バケーションレンタル(貸し別荘)にしようと考えていたと仁美さん。「アル(アルバートさん)が得意の手料理を食べてほしいと言って、現在の料理付きの宿という形態にしました」(仁美さん)

アルバートさんの料理は、ダイナミックでいて繊細。かたまり肉を3日間じっくり煮込んだビーフシチューやスペアリブが好評なんだとか。朝食のパンも手作りです。お客さまから、パンが美味しいから持ち帰りたいというリクエストがあると、焼き立てを食べてほしいからと早朝3時からこね始めるというこだわりようです。

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「パンをこねるときは、Black Pumas の曲を聴きながら。機械ではなく手ごねでやります」というアルバートさん。食べてみて、と出してくださった食パンは、白いところはもっちり、周りの耳はカリカリで、トーストしても焼かずにそのままでも、ほんのり甘さが感じられます。持ち帰りたいというリクエストがあるのも納得です。最近はリコッタチーズも手作りするようになったのだとか。アルバートさんは、こだわり始めると、とことん追求する職人肌のようです。提供する食事は、前菜は和食でメインは洋食、といった具合の和洋折衷。こってりしすぎないと好評だと言います。

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アルバートさんは、ニューヨークの西側に位置するニュー ・ジャージー州出身。アルバートさんが育った地域は冷涼で森が広がり、野生の七面鳥や鹿が庭に遊びに来る環境だったそう。平地と山間という地形以外は、飯綱町ととても似ていると話してくれました。雪かきや薪仕事も 「子どもの頃、おじいさんと一緒にやったことがあるよ」とお手の物で、仁美さんは、助かっていると微笑みます。

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仁美さんは、三重県四日市出身。看護師として救命救急やオペ室で働いていましたが、「忙しすぎて人生をリセットしたくなって」ハワイの大学へ入学し、アメリカの看護師免許を取得。そのままハワイで医療に従事してきました。

アルバートさんは、18 歳から軍隊に入隊してハワイに駐留、通信関係の仕事をしていたタイミングで、仁美さんと出会いました。

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「大学に入学してから結婚、在学中に就職して卒業してからも仕事を続けていたので、結局ハワイには 20 年間住んでいた」という仁美さん。そろそろ日本に帰ろうかと考えたとき、住みたい場所として思い浮かんだのは長野県の北信エリアでした。

「学生の頃から戸隠に遊びに来ていて、大好きな場所でした。ハワイに住んでいるときも、日本に来る度に訪ねていたんです」。移住を検討し始めてからは、帰国すると長野にも足を運び、物件を探したと言います。「飯綱東高原の白樺台で貸別荘を 1 週間借りて滞在したとき、空気も景色もとても気に入って、ここに住もうと決めたんです」。ちょうどネットに現在の物件が売りに出ていて、アルバートさんが多角形出窓が気に入って即決しました。しかし、5年間空き家だったこともあり、窓のサッシや水回りなどは全面的な工事が必要でした。専門的な工事は業者さんに依頼し、内装は自分たちでリノベーションしたそうです。

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間取りは、出窓の居間がある一階は、ほかに玄関とキッチン。居間から階段を上った二階と半地下には、客室が全部で6部屋とバスルームがあり 「二人で切り盛りするのにちょうどいい大きさ」と仁美さん。庭にはバーベキューサイトが設置してありました。

「畑もやっているんですよ」とアルバートさんが見せてくれたのは、巨大なバケツいっぱいのサツマイモ。庭の一部にハーブやトウガラシなどを植えているほか、畑を一反歩(約1,000㎡)借りてトマトやナス、ジャガイモ、サツマイモ、ブロッコリー、芽キャベツ、ズッキーニ、ビーツなど、料理に使うさまざまな野菜を栽培しています。

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一方、仁美さんは、今年から飯綱町観光協会の理事に名を連ね、町を盛り上げる活動に精力的に参加しています。先日は群馬県までみつどん (飯綱町の PR キャラクター)と行ってきたそうです。

「霊仙寺湖の芝生広場でティラノレース(アメリカ発祥のティラノサウルスの着ぐるみを着て競走する競技)をやったら面白いと思うし、犬を連れているお客さん向けに、ドッグランや犬連れでも入れるお店をまとめたパンフレットも作りたいです。ドックランは冬も開けてほしいな」。さらに、農村民泊(都会に住む学生に、田舎暮らしを体験する機会を提供する取り組み)にも受け入れ施設として参加していて、学生たちとの交流を楽しんでいます。「今年は芝浦工業大学の学生が来たのだけど、理系の学生って畑仕事もすごく几帳面にまじめにやってくれるのよ」(仁美さん)。

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東高原は、かつて別荘地として開発された経緯があり移住者や外国の方が多く住んでいて、里のエリアとはまた違った趣があります。それでも、隣近所の集まりである「組」という地元自治会があり、来年にはさっそく、組長の役職が回ってくるそうです。「日本語は練習中」というアルバートさんですが、同じ組内には、夫がスウェーデン出身で「青空カフェ 和夢手(トムテ)」を営むご夫妻をはじめ、8軒中3軒が外国出身で英語が堪能な方たちなので安心だと言います。

「ご近所の皆さんと集まって、一緒に食事をしたりとても楽しく過ごしています。アルは騒がしいパーティーは好きじゃないけれど、適度な距離間で、とてもいいお付き合いができているのがありがたいですね」(仁美さん)。

飯綱東高原の景色は、毎日見ていても飽きないと満足気な表情のお二人。「いいところにいいタイミングで引っ越してきました。引き寄せられたみたいです」。飯綱町の高原の片隅に、穏やかな時間が流れています。

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