日本でりんご栽培が始まった当初は、アメリカやフランスなどから導入された品種が直接利用され、外国の品種に日本名がつけられました。例えばマッキントシュは「旭」、ジョナサンは「紅玉」といったように。
りんご栽培の歴史の古い外国からの品種導入はその後も行われ、これまでに1000種以上が導入されています。その中で日本の気候・風土や消費者の嗜好に合致した品種はおよそ20品種とごく少数です。
りんごの新品種交配には、2種類の花粉を交配育成させるほか、偶然に生まれることも少なくありません。10年を経て突然、実がなることもあります。「桃栗3年柿8年」という言葉がありますが、これは種を蒔いてから実をつけるまでの年数をさしていて、りんごも柿に近い年数が必要です。試験を繰り返して、新品種としてデビューするまでには、普通20年以上かかります。
昭和の初期に始まった日本における品種改良の成果は、近年ようやく現れ始め、早生品種ではつがる、晩生品種ではふじが主要品種として普及、経済栽培されるようになっています。りんご栽培が、経済的に成り立つようになったわけです。
信州りんごの主な品種
祝 いわい ●
夏の味覚をそそる青りんご。アメリカ原産の古い品種。収穫は一番早く、東京のお盆に間に合う。
さんさ ★
あかねとガラを交配したニュージランドとの合作新品種。やや小玉で果皮が薄く、丸かじりに最適。
つがる ●
早生種として一番甘い代表品種で、ふじにつぐ生産高。ゴールデンデリシャスが母だが、父は不明。
高嶺 たかね ◆★
レッドゴールドの実生で長野県で育成された新品種。大玉で果汁も多く、蜜入りもよい。甘味種
スターキングデリシャス ◆
アメリカでデリシャスの枝変わりとして発見された品種。蜜入りよく、果汁も多くて芳香がある。
ゴールデンデリシヤス ◆
アメリカで偶発実生として発見された。多くの品種改良の親になっている。
干秋 せんしゅう ●
東光(ゴールデンX印度)にふじを交配した比較的新しい中生種。果汁多く、甘酸適和で味も濃厚。
紅玉 こうぎょく ◆
比較的酸味の強い味で、今もかくれたファンが多く、クッキングに最適。アメリカ原産の古い品種。
アルブス乙女 ◆
ふじと紅玉の混植園で発見された偶発実生。北アルプスのふもと松本市生まれのミニりんご(平均35グラム)。
陽光ようこう ●
ゴールデンデリシャスの自然交雑実生の巾から生まれた品種。着色がよく、甘酸適和で味は濃厚。
ハックナイン ◆★
ふじとつがるを交配した新品種。大玉で果肉はち密。果汁は最高位で食味も濃厚。甘酸適和種。
ジョナゴールド ◆
母がゴールデンデリシャス、父が紅玉(原名ジョナサン)のアメリカ産、昭和45年に渡来。甘酸適和種。
新世界 ★
ふじとあかぎを交配した新品種。中玉で果汁も多く、蜜が入り食味も良好。着色が非常によい。
世界一 ◆
文字通りジャンボなりんご(500-1000グラム)。デリシャスが母、ゴールデンデリシャスが父。
北斗 ◆★
ふじとむつを交配した新品種。大玉で果汁多く、食味も良好。蜜入りのよい甘味種。
むつ ◆
ゴールデンデリシャスに印度を交配して育成された。大玉で果汁が多く、芳香ある品種。
王林 ●
ゴールデンデリシャスと印度の交配実生。特有な芳香があり、果汁多く甘味も強い。
ふじ ●
味と日特ちのよさで人気が高く、信州りんごの生産高の約半分を占める。国光にデリシャスを交配。
国光
アメリカ起源の古い品種。両親不明、偶発実生。「ふじ」の種子親で昭和45年頃までわが国の最主要品種であった。11月上旬が収穫期。長期保存できる。
藤牧
アメリカ原産。わが国へは昭和49年青森県園芸試験場が導入。別名、南部魁、OBIR2T47 8月下旬収穫。
シナノスイート
長野県果樹試験場が「ふじ」と「つがる」を交配・育成・選抜した品種。果汁が多く甘味・酸味のととのった人気品種。10月中旬収穫。
シナノレッド
長野県果樹試験場で「つがる」に「ビスタベラ」を交配し選抜、登録した品種。8月下旬収穫。
秋映
長野県中野市の小田切健男氏が「千秋」に「つがる」を交配・育成・選抜し登録した品種。濃赤色の果皮が特徴で、さっぱりとした酸味・甘味がある。9月中下旬が収穫期。
写真提供:長野県果樹試験場 無断転載禁止